「朝日の恋人」は1970年〜1972年にかけて、原作者梶原一騎、作画かざま鋭二の手によって週刊少年チャンピオン誌に連載された作品である。
おおまかなあらすじは、喧嘩好きの高校生坂本征二とその同級生が、やはり同級生でヤクザの組長の娘ながら深い人間愛を持つ美少女天地真理に恋心を抱き、彼女にふさわしい男になろうと失敗や挫折をくり返しながらも成長していく姿を描いたものである。
当時、「巨人の星」「あしたのジョー」等のいわゆるスポ根（スポーツ根性）物で大ヒットを飛ばし、漫画原作者としても絶頂期にあった梶原一騎氏が手掛けた所謂「純愛物」に分類される作品である。
梶原氏による純愛物といえば一般的にはこの「朝日の恋人」の終了後、週刊少年マガジン誌に掲載された「愛と誠」の方が有名である。しかしながら、この「朝日の恋人」を読み返してみると、「愛と誠」以前に同様のテーマ、キャラクター、手法が「朝日の恋人」の中で使用されていることがわかった。「朝日の恋人」は「愛と誠」のプロトタイプとも言える作品であったのである。
しかし、プロトタイプ故、「愛と誠」と比べると完成度としてはやや劣る作品であることは否めない。だが、私個人としては血なまぐさい「愛と誠」よりも（もちろんこの作品完成度としては傑作だが）、高校生の初恋を純粋に描いた「朝日の恋人」の方が好感を覚える。
また、この作品は「愛と誠」同様、テレビドラマ化されている。タイトルは諸事情で「太陽の恋人」となり、主演は吉沢京子、桜木健一であった。このテレビドラマは未見だが、原作の方も放送にあわせて第２部「太陽の恋人」と改題されている。さらに、このときは先にテレビの放映は終了していたが、話の区切りのよいところで第３部「夕日の恋人」に改題され、全体で３部作という形になっている。
ところで、この作品は秋田書店から単行本化されている。こちらタイトルは全て「朝日の恋人」になっている（でも多分絶版になっているので、古本屋をこまめにあたるしかないようです）。しかも、残念ながら雑誌に掲載された分が全て収録されているわけではない。連載の後半部分がほとんど未収録なのである。
そういうわけで、せっかくホームページという発表の場を手に入れたのを機会に、この忘れられた佳作「朝日の恋人」を私のできる限りでまとめたいと思います。