単行本１巻あらすじ

単行本第１巻表紙
昭和46年８月5日初版
朝日の恋人特集　表紙へ

　喧嘩好きの少年坂本征二、都立港高校に進学した彼はその腕前で全校を制覇する野望を胸に抱きながら入学式へと向かった。しかし、彼の高校生活第１日目は思わぬ出来事から始まった。
　初の通学電車の先頭車両に乗った彼は運転席の窓越しに前方の風景をぼんやりと見ていた。電車がとある駅に差し掛かったとき、駅のホームから幼い男の子が転落してきた。電車は急ブレーキをかけるが間に合う距離ではない。征二を含めその光景を目撃した乗客がその直後に起こるであろう惨劇を思い浮かべ悲鳴をあげたとき、セーラー服姿の少女がホームから飛び下り、男の子を救い出した。
　思わぬ出来事に遭遇し一時は平静を失っていた征二だが、高校に着くや自分のペースを取り戻し当初の野望を実現せんとまず自分の教室の中でクラスメートを威圧する。しかし、それに対抗する男があらわれた。馬場修平と名乗るその男はその柔道の腕を見込まれて推薦入学してきたという巨漢だ。さっそく一戦を交える征二と馬場。その時一人の少女が遅刻して教室に入ってきた。その少女は先刻駅で男の子をすくった少女だった。その少女−天地真理−は二人の喧嘩を止めようともせず、むしろけしかけるような言葉をかけるのであった。

天地真理との出合いがケンカ魔坂本征二の生き方を変えていく　不思議な彼女の魅力にひかれていく征二、馬場。そしてクラス一の秀才芳村もそうであった。やがて、駅での人名救助の一件をテレビ局が聞き付け、真理にワイドショーへの出演の要請があった。校長先生直々の頼みもあり真理は渋々それを承諾する。
　テレビ放映の当日、征二達はそれぞれの家で真理の出演する番組を見ていた。ワイドショーの司会者は語彙を駆使して、彼女を命がけで男の子を助けた世紀のヒロインとしようとするが、真理はそれらの言葉を白けた顔でやりすごしてしまう。しかし、駅で助け出した男の子がスタジオに現れ、幼い声で彼女にお礼を言った時、彼女は涙を目に浮かべ男の子を強く抱き締めた。
　その番組を見たある巨匠の映画監督が、次回作のヒロインに真理を採用したいと連絡してきた。年頃の娘がこのような申し出を受け入れないはずがない。真理との別れを想像し悲観に暮れる征二達。しかし、彼女はその申し出をきっぱりと断って登校してきた。断った理由を聞く征二に真理は「映画スターよりもすばらしいお母さんになりたい。」と答えるのであった。

　やがて、彼女を巡って様々な事件が起こり、征二、馬場、芳村、そして上級生の野球部のキャプテン紫光一は恋のライバルとなり、互いに彼女にふさわしい人間となるべく競い合っていくようになった。

　夏休みも近付いたある日、征二と馬場、紫は真理の家を訪問する計画をたてる。しかし、そのことを知った征二達の担任教師不破先生は厳しい表情でその計画に反対する。
　不破先生の言葉に疑問を持ちながらも、3人は夏休みのある日、真理の家へと向かった。

　梶原一騎氏がスポ根作家というイメージから脱却すべくとりかかった本作の導入編。単行本1巻の時点では真理のプライベートな部分は謎に包まれており、ある種神秘的な描き方を感じる。真理に心引かれる征二達の行動がコミカルで、この後一世を風靡する「ラブコメ」の先駆たる印象も受ける。

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