昭和46年12月10日初版
朝日の恋人特集 表紙へ
さらに数日後、ふと真理の家まで来てしまった征二は、朱紋組と対立する組織の男達が屋敷の中にダイナマイトを投げ込もうとする現場に遭遇する。無我夢中で男達に体当たりしてそれを阻止する征二！事実を知った真理に感謝され、征二は負傷した身でありながら幸福を感じた。
しかし、この一件は新聞の記事になってしまい、２学期が始まる頃には真理がヤクザの娘であることは全校の知るところとなってしまった。クラスメート達は手のひらを返したように真理を村八分にする。また、生徒の父母達は校長に真理の退学を要求して詰め寄った。
しかし、征二は一人それらの前に立ち上がり、真理をかばった。それどころか勢い余ってその場で真理がそばにいるのも気が付かず自分の気持ちを吐露してしまった。
こうして征二と真理は学校の中で仲間はずれ的な存在になっていった。面白く無いのは恋の競走に出遅れた形になった馬場と芳村だ。そんなある日校内行事として多摩川の河原でのキャンプが開催された。ここでも、真理と征二は村八分状態、二人きりで飯ごうの御飯と多摩川で釣ってきた魚の食事を半ば空元気で食っていたところ、馬場と芳村が征二を呼び出し、川の中州に張ったテントの中に連れ込んだ。
その夜、中州に張られたテントの中では、3人の男たちの話し合いが行われていた。馬場と芳村は征二のとっている行動がかえって真理を学校の中で孤立させることになっていることを指摘する。しかし、話し合いの中、次第に3人は睡魔に襲われ、テントの中で寝入ってしまった。
3人が寝入っている間、キャンプ場付近では雨が降り出した。たちまち水量を増す多摩川。征二達が気が付いたとき、すでに中州は水の中に没しかけていた。一方、河原でも担任の不破先生やクラスメート達が中洲の異変に気がついていた。不破先生は3人を助けようと、身体にロープを結び付け川に飛び込むが、激流に押し流され岸に打ち上げられる。
ますます水量が増えていく中洲で征二達は死を覚悟するが、その時、激流の中を真理が救助に現れた。真理は川の流れを計算に入れて川に飛び込んだため、中洲のあったところまでたどりつくことができたのだ！真理は自分の身体に結び付けてきたロープをまず芳村と馬場の身体に結び付け２人を救出した。しかし、この時点で残ったロープは１本！しかも、激流の強さのため、１本のロープでは征二と真理の体重に耐えられそうにない。真理は抵抗する征二を気絶させ、その身体にロープを結び付け、自らは激流の中に消えていった。
それっきり、真理は行方不明になってしまった。自暴自棄になった征二は学校をさぼり、繁華街をうろついた。ゴーゴー酒場でヤケになって酒をあおる征二は、店の中で踊り狂う若者中に金持ちらしい男に同伴され踊っている天地真理そっくりの少女を見かける。驚いて声をかけるが、少女は自分は天地真理では無いと言う。翌日、紫、馬場、芳村を連れて征二は再びその少女に出会う。馬場達3人もその少女が容姿、性格、癖までが真理にそっくりであることに驚くが、少女は彼等を見ても何の反応も示さなかった。
真理が行方不明のまま、葬儀が行われることになった。真理の自宅から遺書が発見されたのだ。その遺書にはヤクザの生業で世間に迷惑をかけて得た金で生活していくことにはもう耐えられないこと。その償いができるチャンスがあったらそれと引き換えに死んでいこうと思っていること、そして最後の願いとして朱紋組を解散してほしいことが書かれていた。真理の父政五郎はその遺志にそい、葬儀の後朱紋組を解散することを決意していた。そして征二もある決意をした。
葬儀当日、真理の遺影の前で征二はナイフを取り出し、真理の後を追うべく割腹自殺をしようとする。そのとき、あの酒場で出会った真理そっくりの少女が現れ、それを制止した。少女の登場で驚く一同、そして、その場で少女は事実を語り出した。
その少女はまぎれも無く天地真理本人であった。真理は激流の中に消えた後、運良く一命は取り留めたのだが、水中で頭を打ち、記憶を失っていたのだ。その後、盛り場で同伴していた男に助けられていたのだった。征二や馬場達との再会の後、記憶を取り戻したのだが、彼女はこの機会を利用し、自分の家に忍び込んで遺書を置いていたのだった。
まんまと娘にしてやられた政五郎は高笑いを始める。それにつられて征二達も笑いが戻る。葬儀の席は真理との再会の場となった。