単行本未収録部分あらすじ その７
（第３部 夕日の恋人）
朝日の恋人特集 表紙へ
真理を追い求めて、師走の神戸に家出をした征二はやってきた。謎の追跡者より先に真理を見つけるべく、征二は神戸の街を歩き回った。数日間、街の中を彼女を探し求めたものの、足が棒になっただけであった。そんなとき、ふと立ち寄った波止場で港の労働者たちが昼休みの野球に興じているのを目にする。何気なくそれを見ていた征二はその中に真理の姿を確認する。打者として登場した真理は港の荒くれ男のピッチャーが投げた球を豪快にホームランで打ち返した。神戸での真理の姿を暗い生活を送っているものとばかり想像していた征二は、港のごつい男達に混じって明るく生きている真理の姿を実際に見て、そのギャップに声をかけるタイミングを逸してしまう。仕方なく真理の現在の生活を確かめるべく、彼女の姿を物陰から伺うことにする征二。夜になって真理の現在がはっきりしてきた。真理は夜になると、港の労働者相手に屋台を出していたのだった。屋台のメニューはラーメンとおでん、ただし酒はNGであった。しかし、真理の明るさにひかれてやってくる男達によって、屋台は大繁盛であった。真理は港のマドンナとなっていたのだ。店が終わって真理に声をかけようとする征二だが、後片付けをしている彼女につきまといいつまでも離れようとしない若い男が一人いた。その男を新たな恋敵を直感する征二。その時、あの謎の追跡者が物陰から真理の様子を伺っていた。真理目掛けてナイフを投げる謎の追跡者。それに気付きとっさに声をかける征二。真理はその声に反応して間一髪ナイフから身をそらした。慌てて逃げる追跡者を追おうとする征二だが、征二をナイフを投げた犯人と勘違いをした先ほどの若い男に飛びかかられ追跡者を逃してしまう。
しかし、この一件により征二は真理と再会することができた。思わぬ再会に驚く真理。そして何故征二が神戸にいるのかと問う真理に征二は家出の事実を知られては真理に咎められると思い、冬休みに神戸の親戚の家に遊びに来ていての偶然再会だと嘘をついた。先ほどの若い男は西郷虎雄という名で、征二が真理の知り合いと知りすぐに打ち解けた。また、未来の大作曲家を目指し夜の神戸の繁華街でアコーディオンを手に流しをやっている水木洋一郎という青年とも知り合いになった。西郷に馬場の姿を、水木に芳村の姿を重ねる征二。
真理は屋台の売り上げの一部を元朱紋組の家族への仕送りにしていた。征二もまた港の日雇い仕事にありつき、その一部を仕送りに加えてもらおうとする。しかし、時期は正月も終わりすでに3学期が始まる頃になっていた。征二が神戸にいることに疑問を持ち始める真理。問いつめられて返答に窮する征二だが、そのとき青白い顔をした水木が通りかかる。正月で店がしまっていたため、流しが出来ず、手持ちの金がなくなった水木は風邪で声が出ないにかかわらず、無理をしても流しをしようとしていた。水木に金を貸そうにも、仕送りをしたばかりの真理にも手持ちの金は無い。征二は手持ちの金を貸そうとするが水木の作曲家の卵としてのプライドがそれを許さなかった。厳しい現実に思わず「ああ、お金が欲しい。」と口にしてしまう真理。その姿を物陰から伺いほくそ笑む謎の追跡者。
だが、そこで真理に名案が浮かんだ。水木は伴奏に徹してもらい声が出ない水木の代わりに真理が歌を歌おうというのだ。夜の繁華街に乗り出していく二人。征二と西郷もまた、謎の追跡者を警戒するため二人について行く。水木が作詞作曲をした「夕日はあしたの朝日」を歌う真理。すでに水木が歌っていた歌だったが、真理が歌うことで好評を博した。何件かの店を回った時、真理の運命を一変させる人物が現れた。客の中に作曲家として名高い大賀正彦がいたのだ。真理の歌声を聞いて深い感動を覚えた大賀は、真理をプロの歌手にすべく説得する。かつては女優になる誘いを蹴った真理ではあったが、元朱紋組に仕送りをしなければならない現在では断る理由は無かった。水木もまたその才能を見い出され大賀の内弟子となる。
こうして、真理は歌手としてデビューする。家出をやめ、家に戻った征二。その家のブラウン管には一躍トップアイドルとなった真理の姿が映っていた。
↑こんな、断り書きも載ってました。
