そのころ、銀座にある豪華なナイトクラブ「魔王」、いつもなら客でにぎわう店内も近づいてくる台風の豪雨のため閑散としていた。しかし、こんな夜にも客が一人だけいた。そこへこの店の経営者黒崎（実は元朱紋組系列の黒崎組の組長）が子分を連れて店内にあらわれるが、彼はその客がこの手の店にはおよそ場違いな格好をしていることに戸惑った。その客はセーラー服姿の女学生であった。カウンター席に座り膝の上に布に包んだ小箱を抱えたその女学生は黒崎に対して背を向けたまま馴れ馴れしく声をかけてくる。黒崎は凄んで女学生を振りかえさせる。そして、その言葉に従って振りかえった女学生の顔を見て彼の顔に驚愕の表情が走った。女学生は天地真理であった。
無理して冷静を装い、真理の隣の席に座る黒崎。しかし、真理の巧みな話術にのせられて、政五郎の死に対して自分に負い目があることを見破られてしまう。逆に開き直り言葉を荒げ真理を取り囲む黒崎とその子分たち。だが、真理は落ち着いたまま立ち上がると、抱えている箱が発破用のダイナマイトとその起爆スイッチであることを告げた。その言葉にたじろぐ黒崎たち。
政五郎暗殺の黒幕が黒崎であることはすでに真理や元朱紋組の組員たちには見破られていた。見栄っ張りで小心者の黒崎はヤクザ社会では一人前に扱ってもらえないため、朱紋組組長時代の政五郎に特に目をかけてもらっていたのだが、朱紋組解散後はそのことを逆恨みするようになっていたのだった。
真理は黒崎の子分たちを店の外に追い出し黒崎だけを店の中に残すと、自分とともにダイナマイトの爆発による死を黒崎に迫った。土下座して全てを告白する黒崎。やはり政五郎を殺した銃弾は黒崎が雇った殺し屋が放ったものであった。醜態をさらけ出しても必死に命乞いをする黒崎。その無様な格好に一瞬真理は躊躇するが、彼女の決意はそれを許そうとはしなかった。最愛の父を理不尽な理由で殺したことが真理には許せなかったし、さらに黒崎が生きている限り真理と同じ思いの元朱紋組組員が報復に出て多くの血が流れることは確実なことであり、自分の身を犠牲にしても真理はそれを未然に防ぎたいという理由もあった。
なり振りかまわず泣いて許しを乞う黒崎を前に、意を決して真理はダイナマイトの起爆スイッチを押そうとする。しかし、そのとき予想もしない人物が真理の目の前に現れた。
黒崎と二人きりになったと思っていた店内だったが、まだ残っている人物がいたのだ。その人物は店で雇われている掃除婦の老婆であった。台風で店が早終いと思った老婆は二人の前でのんきに掃除を始めてしまう。思わぬ事態にそれまでの冷静さを失い動転する真理。自爆に老婆を巻き込むことが出来ない真理は、必死に老婆に店の外に出て行くように哀願するが、事情を知らぬ老婆は聞く耳を持たない。その刹那、黒崎は立ち上がって老婆を羽交い締めにしダイナマイトへの盾としてしまう。事態の急変にうろたえる真理に黒崎はダイナマイトを渡すように要求する。老婆を爆発に巻き込むことがどうしても出来ない真理は、仕方なく黒崎の言う通りダイナマイトを手放してしまう。黒崎の拳がうなり、切り札を失った真理を床に叩き付ける。
真理は黒崎組に捕われの身となった。政五郎暗殺の事実を知った今では、もはや真理は生きては帰れぬ運命であった。それに黒崎にあれ程の醜態をさらさせた以上それはただの死ではない。子分を呼び戻した黒崎は残忍な笑いを浮かべながら真理を店の地下室へと連れ込む。そこは黒崎に歯向かう者をリンチにかける処刑場であった。地下室の壁から鎖でぶら下がっている手枷に両手で吊るされる真理。もはや逃げる術も無く抵抗することも出来なくなった彼女の背をめがけて、黒崎の子分が報復のムチをふるった！
